From:巽 匡(たつみ まさし)
腰痛のある患者さんから『腰のヘルニアがあるから…』
って聞いたことありませんか?
実はこれ、意外と多い思い込みです。
結論からお伝えします。
椎間板ヘルニアが原因で痛みが出現することはほとんどありません。
そもそも椎間板ヘルニアってどういう状態かちゃんと説明できますか?
椎間板というのは本来は上下の背骨と背骨の間に位置し、この椎間板が上下の骨の間から後方に脱出(ヘルニア)している状態を『椎間板ヘルニア』といいます。
この脱出した椎間板が神経を圧迫することで、痛みが出現する…。
と、思ってはいませんか?
ちょっと待ってください。
神経が圧迫されるだけで痛みでますか?
これは神経の機能を知ると理解できると思います。
神経の機能は例えて説明すると、手で物を触れた時の感覚を電気信号に変換し、脳へと届けるといった信号を『伝導する』という電気コードのような役割を持っています。この神経が圧迫されるということは『信号が途絶える』ことを意味します。水が流れるホースを途中で押し潰すとその先で水は出てきませんよね?
このことを知ったうえで、神経が圧迫されると出てくる症状は、
1.感覚障害(触った感覚が脳へと届かない)
2.筋力低下(脳からの信号が筋へと届かない)
3.腱反射の減弱または消失(受容器からの信号が筋へと届かない)
といった症状が出現するはずで、
これが神経の機能の原理原則です。
実際に国際腰痛学会(1995年)で発表されたBoos N.ら による研究によると『腰痛の無い健康な人』をMRIで検査した結果、76%の人に椎間板ヘルニアが見つかったと報告されています。つまり椎間板ヘルニアがあるからといって腰痛が出るかどうか『わからない』ということがわかりました。
先ほどお伝えしたように、原理原則(神経の機能)をしっかりと理解していれば
『椎間板ヘルニアは痛い』といった思い込みが生まれることもないでしょう
このような思い込み(自分なりの見方)で原理原則を
無視してしまっていることは臨床ですごく多いです。
これは理学療法士にとっても同じで、
患者さんを良くしたいという思いを持っていても、理学療法士として知っておくべき原理原則を持っていなければ目的は達成されません。その逆もそうです。
正しい原理原則を知って、患者さんにより良い知識と技術を一緒に提供しましょう。
P.S.
緊急事態宣言が解除されましたね。勉強会で皆さんにお会いできることを楽しみにしています。
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